人・農地プラン 計画策定の支援強化を

地域の農地を、誰がどう利用するか。その計画作りを進める法案の審議が始まる。

農業の土台を将来にわたって固める取り組みであり、その積み上げは国全体の農業の持続可能性を左右する。各地域での話し合いが重要で、国は現場の推進体制づくりを含めて強力に支援すべきだ。

農地集積・集約のベースに地域の話し合いを位置付けることは、評価したい。農地バンクの創設時には、地域外・農外からの農業参入を妨げるとの規制改革会議の声を受けて地域の話し合いが切り離され、その結果、集積も進まなかった。

現場をないがしろにした政策を改め、正しい方向への軌道修正といえる。 ただ、地域計画の策定が市町村ごとの判断に委ねられたのは気掛かりだ。策定を一律義務にしなかったのは、「現場に大きな混乱をもたらす」(全国市長会)などの反対があったため。市町村の職員数が減り、負担が大きいという事情はあるだろう。しかし、そのために地域計画の策定に手が回らないということになってはいけない。

地域計画の最大の課題は、各地域で話し合いを行い、それを後押しする形で市町村などが策定にしっかり取り組むのか、その実行性である。

集落は高齢化や過疎化で寄り合いが減った上、新型コロナウイルスの影響で人が集まりにくくなっている。自民党議員からは「膨大な量の仕事を本当にできるのか」と市町村や農業委員会、JAなどの負担を懸念する声も上がっている。農水省は2022年度予算に、地域や市町村、都道府県などの取り組みを後押しする事業を用意するが、さらに支援を拡充する必要もあるだろう。

規模拡大一辺倒だった担い手政策に変化の兆しも見える。担い手からは、これ以上の農地を受け切れないと限界感を訴える声も出てきた。地域計画では、認定農業者などの従来の担い手だけでなく、中小規模の農業者や「半農半X」実践者なども含め、「農業を担う者ごとに利用する農用地等を定め」る、とする。

多くの「農業を担う者」を育成・確保していく方向性は、現場の実態に即したものだ。人と農地という農業の土台を守るため、地域の徹底した話し合いを期待したい。


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